公3 愛情卒煙推進キャンペーン事業

概要

 タバコ害との遭遇は、南アジアの口腔がん罹患率が有意に高いことに注目し、NGO「アジアの口腔がん医療を支える会」を起ち上げて、南インド、スリランカに口腔がん医療チームを繰り出した1992年に遡ります。

 特にスリランカ男性の口腔がんが35パーセントにもおよぶことに注目し、唯一の国立大学であるペラデニア大学歯学部病院をJICAが再建することに協力して、口腔がん手術に当時新しい微小血管外科を応用した遊離移植による再建手術法を導入しました。

 同時に口腔がん多発の実態を探るため山間部の村々を訪ねて検診したところ頬粘膜、舌に前がん病変が多発している実態がわかりました。従来その原因はビンロウ噛みの生活習慣によるものと云われていましたが、調査を進めていくとビンロウ噛みと喫煙を併用している人にがんあるいは前がん病変が有意に多く見られることが分かってきました。

 悪の主役はどちらかというとタバコであるということです。

経緯

 本財団の前身であるNGO「アジアの口腔がん医療を支える会」1992年から卒煙に関わり、2005年(新生)日本学術会議の会員に本財団理事長の瀬戸が選ばれると、歯学委員会は「生活科学委員会」と組んで「脱タバコ社会の実現委員会」を結成し、まず学術会議内にできたばかりの「喫煙室」を廃止に追い込みました。

 振り返るとこの委員会に何故「臨床医学委員会」が無関心であったのか不思議です。2008年3月には「脱タバコ社会の実現に向けて」と題する要望書を政府に提出しました。国会にも出向いて超党「1000円議連」の背骨にもなりました。また当時神奈川県知事松沢成文氏は、受動喫煙防止条例に取り組んでおりました。2009年3月に「タバコの煙は愛する人を傷つける」と題して日本学術会議、鶴見大学、本公益財団が共催して神奈川県の「受動喫煙防止条例」の後押しをしました。しかし票が煙を吐いている間はこれら全ての動きは消えていく運命にあるようです。

 現在の本公益財団の活動は、以下9学会に同調して卒煙を進めています。日本口腔外科学会、日本口腔内科学会、日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会、日本口腔衛生学会、日本口腔腫瘍学会、日本有病者歯科医療学会、日本口腔インプラント学会、日本顎顔面インプラント学会の賛同を得て、口腔9学会合同脱タバコ社会実現委員会を結成し、喫煙と口腔疾患との関係について前向きコホート調査を行っています。

 11年前に「喫煙は病気である」と規定され、禁煙治療が健康保険に導入されたことは画期的でしたが、歯科は除外されました。例によって医歯2元論により歯科は外されるわけですが、乖離しすぎた歯科を医療の中に再び定着させるのは口腔外科医の責任と認識しております。歯科医による禁煙治療が認められ、口だけが身体から離れているのではなく「ニコチンが口腔粘膜を通して最速で心臓に直結しますよ」と歯科医が説明するようになると、歯科医と患者の喫煙率も下がるかもしれません。

2024年2月18日

Posted by izumi