公1 志高い歯科医師、医師、学生等の育成事業

概要

1.日本と世界における歯科教育、口腔外科臨床教育の充実と人材育成

 アジア諸国の歯科医療水準は、地域により大きな差が見られる。

 各国政府の歯科行政に対する情熱の温度差であることは間違いないが、医科に比べて歯科教育の質と量に大きな地域差があることが要因として指摘される。

 特に口腔医療に関する取組みは希薄で、歯科教育は歯の修復あるいは補綴の細かいテクニックの修練に終始している地域が多く我が国の教育もその例外ではない。

 しかし口腔や顎に生ずる疾病は極めて多く、会話や摂食嚥下などの口腔機能は人間の社会生活にとって最も重要なものであることを考えると、この領域の医療が希薄であることは人類にとって不幸なことである。

 現在歯科医師過剰と言われながら、わが国の歯科医療の技術水準は次第に低下する傾向にあり、世界最高を誇っていた過去に比べると甚だ遺憾といわざるを得ない。これには多くの原因が重なって負の連鎖現象を呈しており、歯科教育機関、歯科医業そのものが閉塞感のなかで喘いでいるが、この苦境に対して具体的な打開策を打ち出す動きが見えないのが現状である。ここで最も懸念されるのは歯学教育の質的な低下と国家試験のための予備校化であり、最も影響を受けるのは、研究開発と高度臨床を目指す若者の減少である。

 そこで高度口腔医学の研究開発ならびに技術の向上を目指して、厳しい修練を求めて新しい口腔医療を志す明晰な人材を援助し、日本ならびに世界最先端の施設に派遣して口腔医療に新しい息吹をもたらすことを期待したい。具体的にはスイス、ベルン大学、バーゼル大学医学部頭蓋顎顔面外科および中国上海第9人民医院を受け入れ先として、優秀な医学、歯科医学徒を研修、研究等多岐にわたって指導を受けられるよう派遣援助する。

2.前身NPOの活動について

 本財団の前身であるNPO法人アジア対口腔がん協会(以下「AFOC」と言う)においては、一貫して口腔がん医療の国際的振興を目指して、口腔がん頻度の高いインド、スリランカ(がん死亡率の35%)に医療技術移転の拠点を置いた。

 特にスリランカにおいて、JICA(国際協力事業団)の歯科教育プロジェクトによって1998年から2003年1月まで、スリランカ唯一の歯学部であるペラデニア大学とその付属病院の再建を行った。

 AFOCはJICAに協力し、3年間継続的に口腔外科エキスパートを常勤派遣し、口腔腫瘍手術及び再建外科の技術移転を果たし、現在も、スリランカでは現地専門家により世界最先端の口腔がん治療を展開している。

 特にぺラデニア大学准教授Dr.Weerasingheは、AFOCの援助の下に鶴見大学歯学部口腔外科で研究を進め、平成19年1月に鶴見大学から学位が授与され、平成22年2月にぺラデニア大学の歯学部口腔外科の教授として活躍しており、志高い歯科医師の育成に力を注いでいる。

 今後も公募を募り、歯科、口腔外科医療の過疎地域から優秀な歯科医師あるいは医師を招聘し、臨床に関する実地指導を行い、現地住民の期待に応えたいと計画しているところである。

2024年2月18日

Posted by izumi